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「年金は繰り下げた方が絶対に得だ」という話を、一度は耳にしたことがあると思います。。

でも実際のところ、繰り下げれば誰もが必ず得をするかというと、そんなに単純な話ではありません。

FPとして多くのご家族のライフプランを一緒に考えてきた中で、「繰り下げたのに思ったほど手取りが増えなかった」「もっと早く受け取っておけばよかった」というケースをいくつも見てきました。

今回は、繰下げ受給の基本的な仕組みと、見落としやすい3つの落とし穴についてお伝えします。


繰下げ受給の基本:1か月遅らせるたびに0.7%増える

年金は原則65歳から受け取り始めますが、希望すれば受給開始を遅らせることができます。

この制度を「繰下げ受給」といい、1か月繰り下げるごとに年金額が0.7%ずつ増額されます。

具体的に言うと、70歳まで繰り下げると42%増、75歳まで繰り下げると最大84%増になります。

繰下げ年齢 増額率 損益分岐点の目安(何歳まで生きれば元が取れるか)
66歳 8.4%増 約77〜78歳
70歳 42%増 約81〜82歳
75歳 84%増 約86〜87歳

日本人男性の平均寿命は約81歳、女性は約87歳ですから、平均寿命まで生きれば70歳繰下げで「得」になる計算になります。

ただし、「何歳まで生きるか」は誰にもわかりません。

「得か損か」だけで判断することには、思わぬ落とし穴があることも知っておいてください。


見落としやすい罠①:加給年金が止まってしまう

年下の配偶者がいる方は、特に注意が必要です。。

厚生年金を繰り下げている期間中は、「加給年金」という特別な上乗せ年金が支給されなくなります。

加給年金は配偶者分として年約39万円あり、配偶者が若ければ若いほど、受け取れない期間が長くなります。

たとえば5歳年下の配偶者がいる場合、5年間で最大約195万円もの加給年金を受け取れないことになります。

このケースに当てはまる場合は、「厚生年金は65歳から通常受給して、老齢基礎年金だけ繰り下げる」という分割戦略が有効なことがあります。


見落としやすい罠②:年金が増えると保険料も上がる

年金額が増えると、それに連動して医療保険料・介護保険料の算定基準も上がります。

つまり、「繰り下げで年金が増えた分がそのまま手取りに増える」わけではないのです。

特に介護保険料は年金から直接天引きされるため、実際に手元に残る金額は思っていたより少ない、というケースが少なくありません。

繰下げのシミュレーションをするときは、保険料の増加分も差し引いた「手取りベース」での比較が欠かせません。


見落としやすい罠③:在職中の停止期間は増額に反映されない

60〜65歳以降も比較的高い収入で働いている場合、「在職老齢年金」という仕組みによって、年金の全部または一部が支給停止になることがあります。

この支給停止の期間中に繰下げを選択していても、停止されていた分は繰下げ増額の対象に含まれません。

「繰り下げたはずなのに、増額幅が想定より少ない」という落とし穴がここにあります。


繰下げだけが正解ではない:65歳から受給して運用するという選択肢

繰下げ受給は確かに魅力的な制度ですが、唯一の正解ではありません。

65歳から通常受給を開始して、毎月使いきれない分を低リスクの運用(個人向け国債・投資信託など)に回すことで、繰下げと似た効果を得られるケースもあります。

特に健康面に不安がある場合や、相続・家族の生活設計も含めて考える場合は、柔軟な選択肢をご自身の状況に合わせて検討することが大切です。


まず確認したい3ステップ

① 年金事務所で「ねんきん定期便」の内容を確認し、65歳・70歳・75歳それぞれの受給月額を把握する

② 自治体の窓口で、年金額が変わった場合に介護保険料・医療保険料がどう変わるかを試算してもらう

③ 配偶者の年齢や加給年金の有無を踏まえて、手取りベースで65歳受給と繰下げ受給を比較する

「損か得か」ではなく「自分のライフプランに合っているか」という視点で考えることが、繰下げ受給を正しく判断するための軸になります。

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投稿者

yamaguchi.kohei99

yamaguchi.kohei99@gmail.com

ファイナンシャルプランニング技能士2級・AFP資格保有。兵庫県在住の2児のパパ。エンジニアとして数字と設計に強く、FPとの2刀流で家族のお金の不安を解決中。兵庫県立大学大学院卒業、国際学会の登壇・論文誌への掲載経験あり(奨学金半額免除)。ライフプラン設計、家計改善、教育関連相談、収入改善相談が得意。

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