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「妻が親の介護で実家に戻ってから、もう3年になります。定年後の生活費が心配で……」
こういった相談が増えています。
介護が長引くと、収入が減る定年後に「二重生活費」という重い負担がのしかかります。
さらにその先には「実家の相続」という問題も待ち受けています。
実際に起きやすいケースを通じて、どう対処すればよいかを考えてみます。
ケーススタディ:介護別居から老後設計を見直した夫婦
Aさん(59歳・会社員)とBさん(57歳・専業主婦)夫婦のケースです。子どもはいません。
Bさんは実母の介護のために3年前から実家に戻っており、事実上の別居状態が続いています。
主な財産の状況:
- 現在の自宅:住宅ローン残高1,450万円
- 夫婦合計の金融資産:2,534万円
問題①:定年後に年間250万円以上の赤字が発生する
Aさんは翌年60歳で定年退職を迎える予定です。
再雇用(継続雇用)に切り替わると、年収が680万円から190万円へと大幅に減少する見込みです。
そのまま自宅とBさんの実家という「二重生活」を続けた場合、次の費用が重なります。
- 自宅の住宅ローンと生活費
- 実家側での食費・光熱費
- 行き来するための交通費
これらを合計すると、年間250万円以上の赤字になると試算されました。
現在の金融資産2,534万円は、このペースだと10年足らずで底をつく計算になります。
解決策:自宅を売却して実家に同居する
検討の結果、自宅を1,500万円で売却してローンを完済し、Bさんの実家にAさん・Bさん・Bさんの両親の4人で同居することを決断しました。
この選択によって起きた変化:
- 住宅ローンの返済負担がゼロになった
- 二重生活費が解消されて月々の支出が大幅に減少した
- 試算ではAさんが92歳になった時点での金融資産が約2,400万円を維持できる見込み
老後の生活を持ちこたえられるラインに到達しました。
問題②:実家の相続が複雑になる
実家(評価額約3,000万円)の所有者はBさんの父親です。
父親が亡くなった場合の法定相続人は、母・Bさん・弟・妹の4人になります。
Bさんが「これだけ介護してきたのだから実家を受け継ぎたい」と希望した場合、弟・妹に対して法定相続分の代償金を支払う必要があります。
実家3,000万円に対する法定相続分の内訳:
- 母:1/2 → 1,500万円
- Bさん:1/6 → 500万円
- 弟:1/6 → 500万円
- 妹:1/6 → 500万円
Bさんが実家全体を受け継ぐには、弟・妹へ合計1,000万円の代償金を支払う必要があります。
「代償分割」と「換価分割」の違い
相続において不動産を分ける方法は、主に2種類あります。
| 項目 | 代償分割 | 換価分割 |
|---|---|---|
| 内容 | 一人が不動産をそのまま取得し、他の相続人に現金で代償を支払う | 不動産を売却して現金化し、全員で分割する |
| 向いているケース | 住み続けたい・手放したくない場合 | 全員で公平に分けたい場合・代償金を用意できない場合 |
| 注意点 | まとまった現金を一括で準備する必要がある | 売却益に対して譲渡所得税が課される可能性がある |
Bさんの場合は「実家に住み続けたい」という強い意思があるため代償分割を希望していますが、弟・妹への1,000万円という代償金をどう用意するかが大きな課題になっています。
このケースから学べる3つのこと
① 介護が長引く前に、老後の収支と住まいの見直しをする
別居や二重生活が長期化する前に「いつまでにどう判断するか」を夫婦でシミュレーションしておくことが、大きな損失を防ぐ鍵になります。
② 実家の相続については「元気なうちに家族全員で話し合う」
両親が元気なうちに「実家を将来どうするか」について、相続人全員で意思確認しておくことが大切です。
遺言書の作成も、早めに検討しておく価値があります。
③ 相続については税理士・司法書士に相談する
代償金の計算・節税の方法・遺言書の作成方法など、専門家のサポートが必要な局面が多くあります。
「困ってから相談する」のではなく「困る前に相談する」ことが、損失を最小限に抑えます。
老後の設計と相続は切り離せない問題です。
家族全員に関わることだからこそ、早めにオープンな話し合いの場を設けることが最も大切な一歩です。